アギヤーは伝統漁業追い込み漁

夕方自宅へと戻ると外へ出てきた長男と出くわした

「こんな時間からどこへ行くんだ」

「走りに行くけど一緒に行く」

どうやら長男は『自転車か車で伴走する』との意味でわたしに訊いたらしいが　ここは単細胞のオヤジのアタマ　わたしには『オレと走って勝てる自信あるの』と聞こえたのであった

ちょっとカチンときた　『小学６年生になめられている　いっちよここはオヤジの威厳でも見せつけてやるか　２㎞くらいならこいつには絶対に負けん』

長男に

「待ってろよ　着替えてくるから」

きょとんとした顔の長男を後に自宅に戻り　ジャージに着替えジョギングシューズを履いて自信満々な気持ちで長男の元へと

しかし靴を履くなんて何年振りのことだろう　海の仕事をするようになってから靴を履く機会がなくなっていった

今はどんなときでも行動するときはすべて草履履き　学校の集まりだろうが様々な行事においてもすべて草履　

何年かぶりにはいた靴はなぜか新鮮さがあった

「さあ行くぞ　ちゃんとついて来いよ」

「お父さん　勝負する気でいるの　だったら本気で走ってもいいの」

「何言ってるんだ　能書きはいいからほら行くぞ」

ほんとに何年も走ったこともないのに　自分の中では２㎞くらいまだまだ楽勝で走れるものだと考えていた　しかし走り出した長男のスピードにただただビックリ

楽勝どころかついて行くのに必死で　約３００ｍくらい走ったところでわたしの心臓はバクバク言い出した　『もうダメだ胸が痛い』

自転車で一緒に伴走していた次男は　長男の元へとは行かずに遅れているわたしの側をずっと伴走していた

「オイ　お父さんはもうダメだ　もう走れない　お兄ちゃんのところへ行って　お父さんは家に帰ると伝えろ　で　おまえもお兄ちゃんと一緒に走ってこい」

たった３００ｍの走りで帰りは足はガクガク　風呂から上がると全身筋肉痛　かなりの運動不足の自分自身をものすごく実感した一日だった

そして初めて自分の息子に負けたことを実感した日でもあった