2013年06月24日

グルクンの花

毎年4月~5月頃になると海面がざわつくようにナブラが現れる。これを佐良浜の漁師は「花」と表現するが、実はこれグルクンが餌であるプランクトンを補食している際に現れる現象なのだ。夏場にも出ることはあるが、4月~5月頃が最も多く現れる。

4月~5月頃というのはグルクンが産卵に向けて最も栄養を補充する時期にあたるようで、捕食活動が著しく活発になる。餌となるプランクトンは海全体で浮遊しているが、比較的海面付近で多く浮遊している。

あの花の現象はグルクンが海面下のプランクトンを補食する際に口先をパクパク動かしている時の海面の震動が、あまりのグルクンの数の多さからあのような現象、ナブラを作り出している。

ただ何種類かいるグルクンの中でもあのナブラを作り出すグルクンは、タカサゴ・クマザサハナムロ・ササムロ・イッセンタカサゴの4種類のみで、ニセタカサゴやウメイロモドキがこのナブラを作り出す現象を、アギヤー漁に従事するようになってまだ一度もお目に掛かったことがない。

グルクンの花

グルクンのこの捕食行動は彼等にとってまさに命がけの行動で、下から大型の捕食魚に狙われるリスクがある。捕食魚の特徴として獲物を狙う際は獲物の下から襲うというのが、これまで潜っていて幾度となく目にすることのできた彼等の鉄則である。

グルクンは襲われると必ず海底の根に逃げ込む習性があり、釣りをたしなまれる方でナブラをよく観察している人なら分かると思うが、そのナブラが時たまザッという音を立てて消え去ることがあるが、あれは下に彼等の恐怖の元となる捕食魚がいるからだ。

ナブラを作り出す4種のグルクンは根と海面までの距離が比較的浅い海域に生息しているが、2種の大型のグルクン、ニセタカサゴとウメイロモドキは比較的水深の深い海域に生息している。

その2種の気持ちになったことはないが、おそらく水深が深いということは根に逃げ込む距離の長さを考えて、あえて無謀なリスクを冒さないよう水面下まで行かないのかもしれない。

グルクンの花

しかしその2種はグルクンの中でも上位1・2位を誇る大型なので、普通に考えたら食べる量も多いはずで、プランクトンが最も多い水面下で捕食活動をしてあたりまえのような気がしてならないけど。

沖縄の海が舞台となった幾多の釣り番組で案内人の方がナブラのことを、「大型魚に追われて水面までベイトが逃げてきている」との言葉を発している姿を何度となく目にしてきたが、「あれは間違いですよ」と、声を大にして言いたい。

ナブラが現れるということはグルクンが安心して餌を食べている、ほんのひとときの安らぎの時間帯であって、しかしその周辺には彼等に分からないように、彼等を虎視眈々と狙う捕食魚がいてもおかしくない話で、ルアーを投げて大型のターゲットを釣り上げられたのは、ほんの偶然ラッキーストライクな出来事だと思う。

宮古の海で現れるナブラはほぼ99.8%がグルクンのナブラで、残りの0.2%がミジュヌ(イワシの仲間)のナブラだろう。よその海はどうか知らないが、でもおそらく同一気候の同一環境の海で、生息魚も同じであれば宮古の海と変わらないはずだけど。


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Posted by insherman at 17:53│Comments(0)アギヤー漁
 
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