2012年02月25日

コラム「南風」より  60代もまだ子供!

2010年12月29日 琉球新報 コラム「南風」に投稿した記事から


アギヤー漁では孫もいる60代の男であろうとも、いったん出漁すれば長老たちからは子供扱いである。漁のさなかに何か失敗でもやらかそうものなら、60代とて容赦なく怒鳴られることも当たり前にある。

「このフリガナマラ(バカ野郎)ヤラビ(子供)は…」がまず第一声。仮に中堅のわたしや他の若手がミスでもしようものなら、それ以上にさまざまな方角から怒鳴り声が飛んでくる。それはアギヤーが年功序列の縦社会だからである。

とにかく失敗した当人よりも序列が上の先輩方から、カラスの裁判状態で先のような怒鳴り声が飛び交ってくる。だが、ほんの些(さ)細な失敗で水揚げが大きく左右されることもあるので、全員が必死に取り組んでいる証しでもある。

しかしこの年功序列はアギヤーだけにかかわらず、沖縄はどこの地域であれ、基本的に縦社会で構成されているのではないだろうか。

コラム「南風」より  60代もまだ子供!

わたしは今年が40代最後の年となる。しかしオジーたちからすれば、わたしの年齢なんて自分たちの子供の年齢と何ら変わりはない。日本の社会の中では初老に分類される60代の男たちでさえ、ヤラビ扱いされるアギヤーという組織。

オジーたちが引退するその日まで、わたしたちはきっとヤラビのままなのだろう。いや待てよ、60代であろうとも70代からはヤラビ扱いされているわが組織。

わたしが長老になるその日まで、まだまだ「このフリガナマラヤラビは…」と怒鳴られる日々は続きそうだ。オジーたちの怒鳴りの根底に悪意はまったく感じられない。

怒鳴った直後に笑顔で別の話題に移ることもよくあること。慣れがないとこの言葉の変化に戸惑うこともあるだろう。コツは片方の耳から聞いて、すぐさま片方の耳から追い出すこと。いつまでも心に溜(た)めておくようじゃアギヤー漁では務まらない。



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Posted by insherman at 12:00│Comments(0)アギヤー漁
 
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