2012年02月23日

コラム「南風」より  驚愕の身体

2010年11月30日 琉球新報 コラム「南風」に投稿した記事から


前回のコラムで医療関係者から聞いた面白い話があると紹介したが、しかし内容まではお話しできないでいた。高圧の空気を吸うダイバー(職業潜水者)は身体に入り込む高圧の窒素が骨の中まで浸透し、その結果骨密度が低下し、最悪の場合骨壊死(えし)という壊滅的な結果を招くこともあるとのこと。

潜水従事者への検査では、レジャーダイビング関係者のほとんどが20~30代の若者で占められ、対して伊良部島の潜り漁に従事する者は50~60代で占められていた。

ほぼすべての検査を終えた頃(ころ)、そこの責任者が私に話し掛けてきた。これまで長い年月潜水基準を逸脱した潜り方を繰り返してきた結果、骨密度の低下は免れないだろうと予測していたらしい。

詳しい検査結果は持ち帰らないと判断できないが、高圧下での作業等の影響によって骨変化はかなりの割合で見られるが、漁師たちの骨密度が突出して高いとのこと。

コラム「南風」より  驚愕の身体

その年代の平均値を大きく上回り、レジャー関係者の若者たち以上に骨密度が高く、そしてまた身体へ浸透した窒素の体外への排出スピードも極めて速いらしい。排出スピードが速いということは、それだけで減圧症の危険性がいくぶんか低下されるのだろう。

医学的根拠はないが、魚の摂取量の高さがこの身体を創(つく)り出している要因なのかもしれない。これこそまさに環境に適用し、進化した驚愕(きょうがく)の身体だと笑いながら話されていた。

たしかに伊良部島の佐良浜地区では、漁師上がりの年寄りたちに背中の曲がった者を見ることはない。背筋は真っすぐ伸び、誰もが御年以上に若々しく見える。

食事もすべてが魚づくし。骨も捨てることなくみそ汁の具と化す。刺し身・空揚げ・煮付け等、その他もろもろ。どこの家庭の食卓でも毎日見られる光景である。



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Posted by insherman at 12:00│Comments(0)アギヤー漁
 
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