2012年02月16日

コラム「南風」より  驚愕の記憶力

2010年8月20日 琉球新報 コラム「南風」に投稿した記事から


潮の測定が終わると漁を行うためのポイントを探していく。探し出すと最初に測定した潮の流れを参考にし、そのポイントの潮上のリーフエッジでグルクンがいる場所を探し当てる。そのような手順でグルクンを見つけ出していくことになる。

アギヤー漁のサバニには現在ほぼすべての船に装備されているであろう、カーナビと同じ役目をするGPSという機器は装備されていない。

その機器が装備されていれば、実際に漁を行う海底の細かな根をすべて入力しておくこともできるし、次回から容易にそのポイントへ到着することができるようになる。

しかし、ここから各船の船長を務めるオジーたちの脳内GPSが発揮され、「山立て」という方法で細かなポイントを探し当てることになる。

コラム「南風」より  驚愕の記憶力

山立てとは、陸上にある何らかの目印となる対象物に他の対象物二点を重ね合わせ、そこから左右どちらか90度付近にある同じく目印となる対象物二点を重ね合わせ、自船を含めた三点方で行うのが正確な山立てとなる。

しかし島から遠く離れた漁場ではこの三点方での山立ては難しく、ほとんどの場合一カ所の目印と自船との二点方で行っている。

アギヤーのポイントはカツオ漁の生き餌獲(と)りのポイントも含めるとすれば、おおよそ300カ所くらいはあるだろう。しかし何よりも船長を務めるオジーたちに驚かされるのは、その何百とあるポイントの山立てすべてが頭の中に記憶として収められていることだ。

この驚異的なスーパー記憶力はすべてのことを電子機器に依存している現代人にとって、到底まねすることすらできない、尊敬に値する一つの芸術であろう。

人間年を取ると記憶力の低下が叫ばれる。しかしそんな問題は、オジーたちにとっては問題外な話だろう。



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Posted by insherman at 12:15│Comments(0)アギヤー漁
 
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