2012年02月15日

コラム「南風」より  旧暦で考える

2010年8月6日 琉球新報 コラム「南風」に投稿した記事から


沖縄の祭事や神事と同じように海で生きる海人も海のことは旧暦で考える。なぜ旧暦かというと、漁師にとって最も大事な潮の動きは月齢、要するに太陰暦で動いているからである。月齢だと1カ月約29日の計算ということになる。

オジーたちの頭の中にはこの月齢の潮の動きがすべてインプットされている。アギヤーは昼行性のグルクンを獲(と)る漁なので、おおよそ日の出30分ぐらい前に出港する。

出港してすぐ全員の頭にインプットされている月齢を基に、その日の風向きを考慮し漁場を選択する。気圧配置の影響で潮の強弱や流れる方向に若干の違いはあるが、長年培ってきた経験を基にした勘はほぼ間違えることはない。

コラム「南風」より  旧暦で考える

漁場に到着し、まず最初に行うべき仕事として正確な潮の流れを測定することから始まる。海底がよく見える浅い根の上でご飯粒を漂わせ、海底の目標物となる何かと比較しながら、正確な潮の流れの方向を測定しなければならない。

なぜ正確さを期するかというと、グルクンは潮が流れてくる方向に向かい、その根の潮上のリーフエッジでプランクトンを捕食している。そのため正確な潮の流れを測定しなければ、いくらポイントを探し当てたからとはいえグルクンを見つけることができないからだ。

わたしもアギヤー漁師に成り立ての頃、今イチ潮の流れが読み取れなくて、適当に測定しよく叱(しか)られたものだった。いま現在でも潮の動きが定まらない場合だとか、また小潮などの日に潮がまったく動かずどうにも測定しづらい場合がある。

これは内緒の話だが、そんな時はいまだに適当に測定し報告することもある。いまから考えればオジーたちはやはり昔気質(かたぎ)の職人肌なのだ。さほど教えることはせず、見て覚えろであった。よく叱られたものだ。



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Posted by insherman at 12:28│Comments(0)アギヤー漁
 
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