2012年02月14日

コラム「南風」より  夏の風物詩

2010年7月23日 琉球新報 コラム「南風」に投稿した記事から


今年も夏の風物詩スクの季節がやって来ました。スクはアイゴの稚魚のことをいいます。遠く沖縄以南の海で産まれた卵は、黒潮に乗って運ばれる途中に孵(ふ)化し旧暦6月1日の大潮の日、朝の満潮に乗り沖縄沿岸までやって来るのです。

しかしこのスクがどこの沿岸にたどり着くかは神のみぞ知るで、スク以外誰も分かりません。運の悪いことにわれわれ海人(インシャー)は誰一人としてスクと会話することができず、スクとの連絡方法すら知る由もありません。

唯一の手掛かりはカツオ船の船員たちからもたらされる「どこそこの海域で獲(と)れたカツオの腹にスクが入っていた」。それだけがこの時期愛してやまないスクへの手掛かりなのです。

コラム「南風」より  夏の風物詩

しかしこの情報さえ待ち望むスクへの希望にはなんの意味合いもないものです。今年も「どこそこの海域で獲れたカツオの腹にはスクがパンパンに入っていた」との情報がもたらされましたが、そのスクは近場の宮古島などまったく気にする様子も見せず、一路沖縄本島まで行ってしまいました。

年に一度のスク漁は獲れたとすれば海人の間で「臨時ボーナス」と騒がれる、かなり高額配当の付く漁なのです。6月1日の前日あたりからスクを狙う海人の目はスクに向けての戦闘モードに切り替わり、まだ日も昇らぬ暗いうちから海へと繰り出すのです。

そして海人たちは海岸沿いの浅瀬をただひたすらスクを求めて泳ぎ回ります。今年の奥武島のように3トンも5トンも獲れるのであればなんの苦労も味わうことなく大漁で終了なのですが、スクが入ってこない海域の海人たちはただひたすら泳ぎ回るだけなのです。

今年の宮古の海はとうとうスクにふられてしまいましたが、来年こそはきっとここ宮古島へやって来てくれることでしょう。



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Posted by insherman at 12:00│Comments(0)アギヤー漁
 
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