2010年12月25日

老兵は死なず、ただ消え去るのみ

一人のオジィにとうとう引退の日がやってきた アギヤーの中では75歳と2番目に高齢だったオジィ 年には勝てず足の力も弱まり しばらく前からもう泳ぐことができないと弱音を漏らしていた

われわれダイバーと違い水面を担当してきたオジィ 泳ぐ時も風の影響や波の影響をまともに受け 泳ぎに関してはダイバー以上に重労働だったはず

しかしその年までよくやってくれたものだと感心する 年金も貰いサトウキビの畑も持ち 生活に困ってこの年まで海で活きてきたわけではない とにかく海が好きで できるならいつまでも海で活きたいそうだ

老兵は死なず、ただ消え去るのみ

最近は足の衰えからか 弱音を吐くようになってきていた 泳がなくてもいいじゃない 船上の仕事だけしていれば

だがオジィは これじゃみんなに迷惑が掛かってしまうと落ち込んでいた 長年海で活きてきたインシャー(宮古の方言で漁師の意)としてのプライドがそれを許さなかったのだろう

そしてとうとうその日がやってきた 誰かに引退すると話したわけでもなく その日の帰りがけ自分の道具を一人黙々と片付け バイクに積み込み帰ってしまった そして翌日からオジィは船上げ場に現れなかった

老兵は死なず、ただ消え去るのみ

組合メンバーは 道具を持ち帰ったからきっと引退なんだろうと淡々と話していた でも個人的には何も言わず引退するなんてちょっと寂しいじゃないか との気持ちが大きかった

しかし寡黙なオジィらしい引退のしかたじゃないか その時頭に浮かんだ言葉が 第二次世界大戦時のアメリカの有名な陸軍元帥の引退時のセリフだった 「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」

実際の海は引退でも きっとオジィの心の中にはいつまでも海はあり続けるのだろう 



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Posted by insherman at 19:42│Comments(0)アギヤー漁
 
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