アギヤーは伝統漁業追い込み漁

こんなアホなプン(和名：ロウニンアジ)は初めて見た　追い込みを終わってから網を上げに向かうと岩の割れ目から現れた推定４０㎏はあろうかというプンと接近遭遇

しかもこいつは口に何か咥えている　と思ったら平良(ひらら)か池間に住む誰かのポッパー(ルアー)が口の右側に引っ掛かっていた　いきなりわたしが目の前に現れたものだから奴はかなり慌てふためいたようだ

目の前ったってそれでも２mくらいは離れている　「オイ　人間様一人見たくらいでそんなに慌てるなよ　おまえには英語圏の人間様からジャイアントがつく偉大な名前が命名されているだろう」　

奴は自分から見て左側へ逃げれば良かったものの　右手の方へ急旋回して逃げようとした　しかしそこで大きなミスを犯してしまった

口の右側に異物がぶら下がっていたためとっさの出来事では右にしか曲がれなかったのだろうか　それとも奴の単純な判断ミスだったのか



ところが奴の右手にはとんでもない物が待ち構えていた　わたしが浮上させようとしていた袖網がそびえ立っていたからだ

奴だけなら形の大きさから網に絡まることもなく逃げおおせたはずなのに　ルアーのフック(針)が網に絡まってしまった

パニックを起こした奴は暴れまくるが　暴れる分フックは余計に網に絡まってくる　手が付けられないのと面白いのとが半々でしばらく傍観していたがとうとう奴もスタミナ切れで網に横たわるようにおとなしくなった

持っている竿をエラに突き刺し船まで持ち帰ろうかとの気持ちが一瞬脳裏を過ぎったが　仲買に転売したとしてもせいぜい１㎏３００～４００円くらいにしかならないはずだ

奴１匹で人間様はン万円の売り上げ(オレじゃねぇけどな)をうみだしてもらえる　しかもこいつは過去に人間様との死闘を勝ち抜いた強者だ　その証としてルアーが口に付いたまんまだから



かわいそうだから逃がしてやろう　その前にまず周りをチェック・チェック　こんな大きな獲物を逃がしたことを誰かにでも見られでもしていたら船の上でカラスの裁判にあうこと間違いなしだからだ

よし　誰もいない　しかしフックを口から外してやろうにも深く刺さっているため手だけではどうにもならない　それ以上に奴はわたしの優しい気持ちなんか汲むこともせずまた暴れ始めたではないか

奴のデカ頭で頭突きでもされたらボボブラジルか大木金太郎(古すぎて誰も知らないだろう)の頭突き以上の破壊力だろう　フックを口から外すことは諦め網からフックを外してやった

自由の身になった奴はわたしに感謝するどころか　アントニオ猪木ばりの「気合いだぁ～」平手打ちを尾っぽでわたしの横顔に叩き付けとっとと逃げていった

一瞬ムッとして「この野郎喰ってやるぞ」と声にならない声で逃げていく奴に怒りをあらわにしてみたものの　奴以上に奴らに金をうみだしてもらっている人間様に感謝されるべきなのかもしれない？？？